電験3種vsエネルギー管理士

なにかと比較されることが多い電験3種とエネルギー管理士の電気分野。

エネルギー管理士の電気分野は、電験2.5種と呼ばれたりします。この記事では、そんな二つの資格を比較してみようと思います。

電験3種vsエネルギー管理士

全体的な試験の比較

エネルギー管理士も電験3種もともに4課目あり、科目合格制度があります。合格点は、エネルギー管理士が6割固定、電験3種は5割~6割程度です。

また、エネルギー管理士は、電気分野と熱分野に分かれています。

合格率を見ると、難しいと言われるエネルギー管理士の方が電験3種より合格率が高いです。最近の電験3種の合格率は、常に一桁です。対して、エネルギー管理士は、熱分野と電気分野の合計ですが、合格率が2割を超えてきます。

電験3種エネ管
平成24年5.9% 23.3%
平成25年8.7% 27.9%
平成26年8.4% 21.5%
平成27年7.7% 23.3%
平成28年8.5% 20.1%
平成29年8.1%28.4%
平成30年9.1%28.1%
令和元年9.3%32.6%
令和2年9.8%36.7%

これだけ見ると、エネルギー管理士の方が簡単に見えます。

※エネルギー管理士の合格率は電気・熱合算です。

エネルギー管理士はマイナーな試験だから、受験者のレベルが高いんだ!なんて意見もあります。それも一理あると思います。

しかし、実際に両方の試験を受験してみて、エネルギー管理士は電験3種より内容は高度だけど、電験3種より合格しやすいと感じました。

試験形式の違い

エネルギー管理士と電験3種では、試験形式の違いもあります。エネルギー管理士の方が部分点がもらいやすいのです。

例えば、エネルギー管理士の文章問題では、下の写真の空欄のうち一つでも分かれば部分点がもらえます。

エネルギー管理士の実際の問題。一つの空欄を正解すれば、部分点がもらえる。

一方、電験3種はすべての問題が5択です。文章題は、一つ空欄が分かれば選択肢は絞れますが、完答できなければ点数はもらえません。

電験3種の実際の問題文。空欄が一つ分かっても部分点がもらえない。

合格点の6割を目指すのに部分点があるかどうかは非常に大きいです。電験3種は6割に届かなくても合格できる可能性はありますが、それでもエネルギー管理士の方が部分点がもらえる分合格しやすいのかなと思います。

以下では、もう少し細かく両資格の科目ごとの比較をしてみようと思います。

理論 vs 課目Ⅱ.電気の基礎

電験3種の理論にあたるのが、エネルギー管理士の課目Ⅱ.電気の基礎です。

電験3種の理論には電子回路(トランジスタやダイオードなど)がありますが、エネルギー管理士には電子分野がありません。また、エネルギー管理士の電気の基礎は、情報処理の分野や自動制御の分野が詳しく出題されます。

なかでも、ラプラス変換を使った自動制御や微積分を使わないと解けない問題は、エネルギー管理士の特徴です。これらの問題が、電験3種からエネルギー管理士にステップアップするのに、数学の本が一冊必要になる理由です。


問題を解くのに使用する数学レベルはエネルギー管理士の方が高いですが、問題の難易度自体は電験3種も負けていません。むしろ、電験3種の理論の方が、嫌らしい問題が多い印象です。

電力 vs 課目Ⅲ.電気設備および機器

電験3種の電力に一番近いのが、エネルギー管理士の課目Ⅲ.電気設備および機器でしょうか?

ただ、電験3種は純粋に電気の資格ですが、エネルギー管理士は、省エネの資格です。電験3種の電力のような、発電所などの電気を作る側の知識はエネ管では求められません。その代わり、エネ管では省エネの問題が出題されます。

課目Ⅲの電気設備および機器は、電験3種の電力と機械を合わせた課目です。電力の配電と機械の変圧器や回転機の問題がメインです。

配電の部分は、電験3種より少し難しめです。一方、変圧器や回転機は、近年の電験3種の方が難しい問題が多いです。

機械 vs 課目Ⅳ.電力応用

電験3種の機械の範囲になるのが、エネルギー管理士の課目Ⅳ.電力応用です。

変圧器や回転機は上の課目Ⅲの範囲ですが、それ以外の電験3種の機械分野が課目Ⅳに入っています。電動力応用、照明、電気加熱、電気化学、空気調和が課目Ⅳの分野です。

空気調和は電験3種の機械の範囲外ですが、それ以外は電験3種の機械の範囲です。

エネ管では、照明、電気加熱、電気化学、空気調和は選択問題になっています。この4分野のうち2分野を選んで解答する形です。

電動力応用はエネ管の方が明らかに難しいです。照明、電気加熱、電気化学、は電験3種もエネ管も似たようなレベルです。全体的にエネ管の問題の方が難しいですが、部分点があるので点数は稼ぎやすいです。

法規 vs 課目Ⅰ.エネルギー総合管理および法規

電験3種の法規に当たるのが、エネ管の課目Ⅰ.エネルギー総合管理および法規です。

エネ管の課目Ⅰは非常に簡単な課目です。電験3種の法規は、試験年度によって難易度が上下しますが、エネ管の課目Ⅰは常に簡単です。電験3種の法規のような地獄の年は今のところありません。

エネルギー管理士の課目Ⅰは、法規というよりエネルギー情勢などのことも聞かれます。条文を覚えることがメインの電験3種の法規より、かなり勉強しやすいと思います。

エネルギー管理士の課目Ⅰでは、条文の暗記よりも総合的な知識を試される印象です。エネ管では、常識問題なんかも出題されます。

実社会における両資格の位置づけ

実社会では、エネルギー管理士は活用場所がかなり限られます。電験3種も委託がすすみ、有資格者があまり気味です。

エネルギー管理士は、エネルギー管理員という講習+試験で取れる資格で代用できます。電験3種も無試験の認定制度があります。資格がどうしても必要なら、わざわざ難しい試験を受験する必要はありません。

電験3種もエネルギー管理士も資格そのものとしての価値より、資格に合格できたという事実の方が重視されてきているのかもしれません。

最後に

エネルギー管理士は、電験3種とほぼ同レベルだと管理人は感じました。電験3種よりエネ管の方が難しいのですが、点数は稼ぎやすいです。

電験3種を勉強中の人は、試しにエネルギー管理士の電気分野を受験しても良いと思います。電験3種に合格できるレベルの受験者ならば、エネルギー管理士も課目合格は堅いはずです。

エネルギー管理士の6割って意外と簡単に取れますよ。

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