【電験3種】最初に勉強するべき科目は理論

電験3種を勉強するうえで、最初に勉強するべき科目は理論です。その理由は、理論で学ぶ知識が他の科目に必要だからです。この記事では、電験3種の理論科目の難易度、参考書、勉強方法を紹介していきます。

電験3種理論の参考書。

【受験概要】

【科目名称】理論 (第3種電気主任技術者)
【受験年度】平成24年度
【自己採点】90点

勉強時間

期間は半年間、勉強時間は約150時間。

電気に関する知識や経験はありませんでした。オームの法則を思い出すところからのスタートです。高校時代は数学が得意科目でした。

物理の電気分野は高2に勉強したはずですが、まったく覚えていませんでしたw

受験時の主な所持資格:なし

【難易度】

電験三種 ★★★★★★★★☆☆ (8/10 難関中位)

理論科目 ★★★★★★☆☆☆☆ (6/10 普通上位)

理論の過去の合格率

受験年度合格率
平成22年19.6%
平成23年11.9%
平成24年18.4%
平成25年14.3%
平成26年17.4%
平成27年18.1%
平成28年18.5%
平成29年19.4%
平成30年14.8%
令和元年18.4%
令和2年24.6%

理論の出題は、計算問題が8割前後です。計算が得意な人にとっては勉強しやすいです。そうでない人にとっては、4科目で一番難しく感じるかもしれません。

理論では、目に見えない電気を数字で表します。論理的な思考が要求されます。公式に数字を当てはめれば解ける問題は、一問たりとも出題されません。公式を使うにしても、その問題に適した形に変形して使う場合が多いです。

最近では、参考書や過去問で見たことがない問題が出題されています。難易度は年によって変わりますが、基本的には参考書と過去問をしっかり勉強すれば合格点には届くと思います。

【勉強を始める前に】

理論の勉強を始める前に、自分の実力を知る必要があります。理論の内容を理解するためには、数学や電気の知識がある程度必要です。数学の知識がないと電験3種の参考書の解説が理解できず、勉強をしてもほとんど身になりません。

ほとんどの人は、参考書の問題を解いても最初はなんとなくしか分からないと思います。それでも必要な数学の知識があれば、だんだん理解できてくるものです。これが数学の知識がないまま勉強をしていると、一生なんとなくしか理解できません。

それでは合格は遠いと思います。

第二種電気工事士合格者

一番多いパターンは、第2種電気工事士(電工2種)合格後に電験3種の勉強を始めようという人でしょう。電工2種の計算問題が解けた人は、直流回路の基礎はできていると思います。

電験3種の最初の難関は、直流回路の次の交流回路です。電工2種では交流回路について深く触れていません。交流回路は、三角関数、ベクトル、複素数などの数学分野がしっかり理解できていないと理解するのが難しいです。

ベクトルと複素数は高校2年生レベルでしょうか。三角関数は、sin(90+θ)=sin90・cosθ+cos90・sinθ=cosθ レベルの知識は必要かもしれません。

もしこれらの分野が苦手だと言う人は、電気数学の勉強から始めることをおすすめます。人によっては中学数学の勉強が必要な人もいると思います。下の電気数学の参考書を読んでも理解できなければ、中学の数学の基礎が足りていない可能性があります。

電気数学の参考書

マンガでわかる電気数学は、漫画形式で読みやすいです。難しいのは嫌!という人にはおすすめですが、電験3種の勉強をするならば難しい参考書で勉強することは避けて通れません。

漫画は読みやすくわかりやすいのですが、漫画にページを多く割きすぎて例題が少ないです。また、漫画以外の文章部分にも大事なことが書かれており、すべてが漫画で勉強できるというわけでもありません。


電験三種合格の数学は、微分積分に軽くふれています。3種には微積分は要らないと言われますが、少しでもいいので微積分の知識があるとかなり理解度が変わってきます。

例題も30問ほど載っており量も十分です。上のマンガでわかる電気数学は、易しめの参考書。こちらは上の本と比べると少し難しいかもしれません。それでもこのレベルが電験3種の基礎です。

ラプラス変換の勉強は必要ありませんが、微積分は少しでも理解していた方が良いです。例えば、波形の実効値や平均値を求める問題で微積分が分からないと、{ I }_{ av }=\frac { 2{ I }_{ m } }{ \pi  } というような公式を暗記するしかありません。

ここで簡単な微積分が分かると、公式の暗記から解放され応用問題にも対応できます。電験の勉強を始めた頃は、微積分の恩恵は分からないかもしれません。勉強を進めていくうちに、微積分が分かっていることで見えてくるものがあると思います。

現在の電験3種は、合格点ぎりぎりを目指して合格できる試験ではありません。余裕がある方は、微積分も詳しく勉強してみると良いかもしれません。参考書に書いてある公式の見方が変わったりすると思います。

もちろん微積分なんてやらなくても、勉強時間を十分確保すれば合格点には届くと思います。少しテキストを読んで無理!と思ったら微積分は飛ばしてもいいと思います。3種合格後、エネ管や電験2種を目指す方には微積分は必須です。

第一種電気工事士合格者

電工1種の計算問題がある程度理解できた人は、理論の勉強を始めてもいいかもしれません。電工1種の計算問題が電験3種の基礎です。あまり理解せずに試験だけ合格したという人や複素数やベクトルが分からない人は、電気数学の参考書で勉強してください。

電工2種の合格者も、電験3種の前に電工1種を受験するのはおすすめです。昔は、電工1種が電験3種への良い踏み台だったらしいです。今ではかなり難易度に差があります。それでも電工1種の筆記試験の問題をしっかり勉強すれば、電験3種の勉強の役に立つと思います。

電気工事士試験の未受験者

電気工事士を受験せずに電験3種を目指す人もいると思います。理系の人ならもちろん可能だと思います。それ以外の人は、よほど数学や物理に自信がない限り電気数学の勉強から始めたほうが無難です。

電気数学というよりも、電験の前に第二種電気工事士や第一種電気工事士の試験合格を目指すことをおすすめします。

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【参考書】

電験3種の参考書用の本棚。

(1) これだけ理論

一番おすすめの参考書です。電験3種の理論に合格するための最低限の知識をまとめてある印象です。この本で勉強して内容があまり理解できなかったら、電気数学の勉強からやり直す必要があるかもしれません。管理人はこの本をメインに勉強しました。

(2) 完全マスター 理論

理系の人や微分積分が分かる人におすすめです。それ以外の人は手を出さないほうが良い参考書です。「これだけ理論」より内容が難しいです。式の導出が詳しく、ところどころで微分積分を使います。上のレベルを目指す人や、確実に理論に合格したい人向けでしょうか。

文字の大きさも小さく、漫画風の挿絵などもありません。非常に堅いイメージの参考書です。一般の人から見ると参考書というより専門書に見えるかもしれません。例題には過去問がメインで掲載されています。式の導出などの内容の詳しさで選ぶならこの参考書でしょうか。

(3) 徹底解説テキスト 理論

理論の勉強では使いませんでしたが、他の3科目ではこのシリーズの参考書も使いました。レベルとしては「これだけ」シリーズと同じくらいです。

簡単な例題が多く掲載されており、例題を解きながら勉強をすすめていく参考書です。毎年改訂されていますが、基本的な部分は変わっていないと思います。

これだけ理論が使いづらいという人は、この本に目を通してみても良いかもしれません。

(4) よくわかる理論

初心者の方におすすめ!と言われていた参考書です。私はおすすめしません。なぜならこれ1冊だけでは内容が不十分だからです。

初心者の方には「これだけ理論」がおすすめです。「これだけ理論」でどうしても分からなかったら、分かるまで何度も勉強するか、電気数学の勉強に戻るしかないと思います。

理解できないからといって、参考書のレベルを落としても意味がありません。「これだけ理論」が理解できないなら、この参考書も理解できない可能性が高いです。

電験3種で「簡単」と言われている参考書は、説明が分かりやすく書いてあるわけではありません。簡単な参考書は、必要なことを省いて書いてあるだけというのが管理人の体験談です。

(5) 電験3種突破演習

昔はこれ1冊と過去問で合格できたのかもしれません。今では不可能に近いです。基礎的な問題集といった位置づけです。Amazonのカスタマーレビューの評価が高いのでつられて購入しないようにしましょう。電験3種がまだ比較的簡単だった時代の参考書です。

電験3種の勉強で避けるべき参考書は、「4科目1冊の参考書」と「古い参考書」です。もちろんそれらのタイプの参考書は、サブとしては使えます。受験者の能力が高ければどの参考書で勉強しても、最後に過去問演習をすれば合格できますが、普通の人はほぼ無理だと思います。

【勉強方法】

公式を覚える

まずは参考書部分を読んで、公式をある程度覚えましょう。その後はとにかく問題や例題を解きましょう。公式を完璧に覚えてから問題を解くのではなくて、問題を解きながら公式も覚えていくという形がおすすめです。

公式は覚えるのではなくて、体に染み込ませるくらいのイメージです。何度も繰り返し問題を解きましょう。条件反射で公式を使えるようにならないと通用しません。試験本番で、1問にかけられる時間は4分30秒です。1問1問公式を思い出しながら…では時間が足りません。

参考書の問題は初めは解けない

勉強を始めた頃の私は、参考書の問題がほとんど解けませんでした。それでも何回も解いていくうちに、理解できるようになりました。

最初に問題を解く時は、間違えて当然です。解説を読んでなんとなく理解できるレベルで十分です。解けない問題を考え込む必要はありません。少し考えて無理なら解説を読みましょう。その代わり解説だけはじっくりと読んでください。深く勉強するのはある程度進んでからです。

私の参考書も最初の方は×印だらけです。つまり、ほとんど理解できなかったのです。それでも本番では90点で合格できました。電気数学の基礎ができている人は、諦めずに勉強すれば、きっといつか分かる日が来ると思います。

電験3種のこれだけ理論の勉強過程。最初は何も分からず間違えてばかりだった。

問題の解説が理解できない時

過去問ですと解説がしっかりしているのですが、参考書は解説が不十分な問題も多いです。そんな時、私はその問題の問題文をGoogleで検索しました。そうすると、誰かがその問題についてYahoo知恵袋で質問していたりするものです。みんな分からない問題はだいたい一緒です。

問題文を検索する際は、”変圧器の二次側の負荷インピーダンスが15” という風に問題文の一部をそのままダブルクォーテーションで囲ってGoogleで検索する方法もあります。

もし、検索しても満足いく答えが得られなかったら、自分でYahoo知恵袋で質問する方法もあります。私も何度かYahoo知恵袋にはお世話になりました。当たり前ですが、質問するということは回答者の貴重な時間をいただくことになります。丁寧に分かりやすく質問しましょう。

計算問題は数をこなす

理論の計算問題の勉強法は、身もふたもありませんがとにかく問題を解くことです。その際に電気数学の基礎の理解が甘いと、いくら問題を解いても身になりません。なので理論の勉強を始める前に自分の実力をしっかり把握し、必要なら電気数学の勉強をしましょう。

以上が私の理論の計算問題の勉強法です。文章問題は、参考書部分を読んで暗記する必要があります。文章問題は出題率2割ですので、理論の対策は出題率8割の計算問題がメインです。

計算問題の最高の対策は、問題数をこなして自分のなかに解法パターンを定着させることです。参考書は一科目一冊で合格可能だとは思います。しかし、自分が使える解法パターンを増やすために1冊の参考書だけでなく、複数の参考書を使うのも良い方法だと思います。

とにかく問題を解きましょう!

最後は過去問で仕上げ

当たり前のことですが、参考書の勉強が終わったら過去問の演習をしましょう。電験3種は過去問と同じ問題は出題されないですが、過去問演習が勉強の中心だと思います。大学電気科卒の人の場合、法規以外は過去問演習だけで合格できるのかもしれませんね。


過去問は上が4教科の10年間分の過去問が1冊に掲載されているもの。通称電話帳です。左1ページに問題が1問、その問題の解説に右1ページをまるまる使っています。非常に勉強しやすいです。下は、法規1科目だけの15年間分のテーマ別過去問です。


11~15 年前というと2000年台半ばです。その頃は電験3種が今より簡単でした。その頃の過去問も演習する価値はあると思いますが、過去問を4教科分購入しなくてはな りません。徹底的に対策したい方は15年間の過去問。あまりお金をかけたくない方は10年分でいいと思います。

【最後に】

電験3種の勉強を始めてみると、多くの人は分からないことだらけだと思います。私は理解度に応じて参考書に印をつけますが、最初は参考書の問題に×印ばかりつけていました。それでも諦めずに勉強していくと、何となく理解できるようになりました。

私の理論の勉強法は、受験数学の暗記数学というものに近いです。とにかく問題をこなして解法を理解しながら暗記するというやり方です。

暗記するだけだと応用がきかないので、しっかり解説を読んで理解して暗記するというのがポイントです。この勉強法にも合う合わないはあるとは思います。

何も分からない状態で問題を解くのは苦痛だと思います。それでも問題を解き続けることが、理論に合格する近道だと私は思います。

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